あらすじ
若松孝二監督の映画作品に魅了された21歳の吉積めぐみは、若松プロダクションの門を叩き、女性初の助監督として働き始める。

1970年代の若松プロは、若松孝二を筆頭に若い才人たちが集まり、前衛的なピンク映画を量産して映画界に衝撃を与える熱気にあふれた現場だった。

仲間たちとたむろし、酒、タバコ、時には資料のレコードを万引き、と何でもありの仕事をこなしながら、映画作りの世界に没頭していくめぐみ。

しかし、仲間たちの中には、情熱を使い果たしたと言って去っていく者、違う活躍の場を見出して巣立っていく者もいた。ある日、めぐみは脚本・監督のチャンスを与えられるが、自分の作りたいものをうまく表現することができない。

彼女の苦悩をよそに、若松監督らは社会問題へと視点を広げ、海外の紛争地の取材へと飛び出していく。自分は何者にもなれないのではないか・・時代の熱気の中で、不安を抱えながら生きる若者の葛藤を描いた青春映画。

総合評価 

評価:★★★★★
印象:泣ける・悲しい・知的

1970年代の実在の映画人たちを描く作品で、当時のことも彼らのこともほとんど知らないけれど、なんでもありの時代の才人たちの熱気に魅了されました。

その中で確かに青春の日々を過ごしつつ、自分の道を見つけられずに思い悩むヒロイン像には深く共感してしまいます。希望と不安を抱えながら若者時代を過ごした多くの人の心に響く作品だと思います。

ヒロインの門脇麦が、地に足の着いた存在感で、一気に好きな女優さんになりました。アングラな空気を醸し出すほかの俳優さんたちも素晴らしいです。

止められるか、俺たちをのここが良かった

1970年代のことはよく知らないし、若松孝二監督の作品もほとんど見たことはないので、劇中に登場する実在の人物や映画作品におおっと思うようなことはないのですが、それでもこの時代や若き才人たちの熱気が伝わってきて魅了されました。

若松孝二監督を演じる井浦新のキャラが立っていて面白いのですが、それ以上に足立正生監督役の山本浩二が、若松監督をサポートしつつ自分自身の熱意も持っている静かな立ち位置が光っていて印象に残りました。

そして何より、ヒロインのめぐみを演じる門脇麦が、この時代に確かに生きていた彼女の地に足の着いた存在感と、若さに揺れ動く危うい青春像を体現して素晴らしいです。

映画の世界の熱気に魅了されつつ、その中での自分の立ち位置に迷い、自分は何物にもなれないのではないかという不安を抱えながらもがく彼女の姿は、とても普遍的な青春を感じさせて、社会で生きていく多くの人の共感を誘うものだと思いました。

ヒロインも実在の人物だということは、見ている間は知らなかったので、終盤の展開にはちょっと驚きましたが、時代の中で確かに息づいていた彼女の青春を切り取った青春映画だと思います。

彼女の親友オバケを演じるタモト清嵐、荒井晴彦氏を演じる藤原季節など、初見の若い俳優さんたちも才気を感じさせて心に残りました。

印象に残ったセリフ・シーン

めぐみが初めて脚本と演出を任されて、活き活きとその準備に取り組むものの、いざ作品を作り始めるとどうしていいのかわからず、現場の俳優からも首をかしげられて、出来上がった作品もまったく評価されないシーン。

助監督としての彼女は最初からしっかりしていて、働く女性という感じなのだけれど、ここで初めて夢に向かおうとする若者の情熱が垣間見えて、それが打ち砕かれてしまう挫折の痛みが強く伝わってきました。

後から入ってきた荒井晴彦氏が、そのふてぶてしい第一印象とは裏腹に、若松監督に早々に認められて追い抜いていく感じもリアルで厳しい。

映画監督になりたい、何を撮りたいかはまだわからないけど・・と繰り返しつぶやいていた彼女が、いつか不安に葛藤し、恋人に「映画、やめようかな・・」ともらす、涙の滲んだ笑顔も心に残ります。

一方で、前衛的な作品を次々に作り出す若松プロの映画作りの現場のシーンは異様な熱気と活気に満ちていて、それも青春の場面として魅力的でした。

その中で動き、てきぱきと指示を出し、仲間たちと笑いあう彼女は、確かに輝いた青春を謳歌していたのだと思います。青春の明と暗を鮮明に描いた作品としても素晴らしいと思います。

こんな人にオススメ

社会で普通に生きている多くの大人たちにおススメです。

ヒロインが抱える、自分は何物にもなれないのではないかという葛藤はとても普遍的で、普通に働いている多くの人の心に響くものだと思います。

葛藤の真っただ中にいる若者はもちろん、中年になった自分としても、リアルタイムでとても共感できる映画でした。

そしてもちろん、映画に魅了されている人にも、とても引き込まれる映画だと思います。自分自身は若松監督にあまり思い入れはないけど、それでも当時の映画人たちの姿は興味深かったです。