ユピテルとイオのあらすじ

地球は生き物が住めないほど酷い環境汚染にさらされ、人類のほとんどは宇宙へ脱出しました。

科学者を父に持つサムは地球に残り、汚染状況の調査を続けています。廃墟と化した街では呼吸をすることさえできず、マスクをつけ、酸素ボンベで酸素を送りながら短時間しかいられない状態です。

人間どころか、動物も虫も植物も死滅した世界ですが、サムはまだ地球が見捨てられず、シェルターの中で野菜を栽培したり、蜂を育てたりしながら、地球に残る術を探っています。

ある日、サムの家の近くに、気球に乗ったマイカという男が降りてきました。

マイカは地球を離れるための最後の脱出船に乗る前に、サムの父親ウォルデン博士に会いたいと言います。サムはウォルデン博士は外出していると言いますが、実は隠していることがありました。

総合評価 

評価:★★★☆☆ (普通)
印象:悲しい・知的・微妙

ポストアポカリプスものですが、独特な世界観があり、映画全体に物悲しさが漂っています。主人公のサムの行動から、なんとか地球を見捨てずに済むようにと必死で研究を続けている様子がよくわかります。

美しかった地球をあきらめきれないサムの気持ちが伝わってくるので、見ていると悲しい気持ちになりました。

良いストーリーでしたが、進み方がゆっくり過ぎたのと、一体地球に何が起こったのか、他の人類はどうしているのかハッキリしないのがマイナス点なので、評価は★3としました。

ユピテルとイオのここが良かった

主人公のサムが魅力的な映画

サムはいつも何かを深く考えていますが、あまり感情を表に出さないタイプです。荒廃した地球に残り、ひとりで汚染状況の調査を続けるほど意志の強い女性なんです。

映画を見ていると、サムの地球への深い思いが伝わってきます。科学者である父親の意志を引き継ぎ、研究に打ち込むサムですが、遠く離れた場所にいる彼氏のことを想う、女の子らしい面も持っています。

彼氏のイーロンと再会することを楽しみにしながらも、地球を見捨てることができず、悩みます。

普通なら死ぬかもしれない場所を離れて、愛する人の元へ駆けつけるでしょうけれど、サムの地球への想いは強く、自分は二の次なのです。

サムを演じたマーガレット・クアリーが、サムの揺るがない決意や、女性らしい表情の変化をうまく表現しています。

マイカが不思議な世界観に合っている

それと、マイカを演じたアンソニー・マッキーも、この映画の不思議な世界観にピッタリでした。

マイカは気球に乗って来るのですが、突然近未来型の気球が空に現れるシーンは、ファンタジーっぽくてとてもキレイです。

その後のマイカとサムのかかわりと、ふたりの決断がストーリーに深みを与えます。全体的にはちょっと地味ですが、地球を愛する女性の優しさや強さがしっかりと描かれた良作です。

印象に残ったセリフ・シーン

マイカが気球で現れるシーン

嵐で破壊された場所をサムが歩いていると、突然雲の中から気球が現れます。

大自然の中を近未来的な気球が空からゆっくり降りて来るシーンはとても幻想的です。このシーンが「ユピテルとイオ」の中で一番美しいと思います。

しかも、この短いシーンに後半の重要なシーンの伏線があります。マイカは気球から降りると「博士に会いに来た。無線を聞いた」とサムに声をかけます。

その時のサムの顔がなんとも変な顔なんです。誰もいない場所に人が来たことが嬉しいとか怪しんで警戒するとか、そんな顔ではなく、「なんで来たんだ」という感じです。

なぜサムはそんな嫌な顔をするんだろうと、ここで思ってしまうのですが、その理由は後半でわかります。

あと、気球から降りたマイカがSFっぽい服装をしているのに、地上にいるサムが現代的な服装をしているのも対象的で面白いです。

そして、印象に残ったセリフは、マイカがプラトンの「饗宴(きょうえん)」についてサムに話す時のセリフです。

マイカは、人間はもともと2人で1人だったけれど、神の怒りを買い、2つに引き裂かれたとサムに語ります。そして「引き裂かれた俺たちは常に残りの半分を探している。それが人間だ」と言うのです。

人がパートナーを求めるのは、半分ずつの人間が出会ってこそ、ひとりの人間として完成するからだ、という深い表現です。このセリフには心がじーんとしました。

ダメだった所や改善点は?

時々展開がゆっくり過ぎて退屈に感じるシーンがありました。派手に地球が崩壊するシーンなどないので、緊張感あふれるSF映画が好きな人には物足りないと思います。

一体地球に何が起こったのか、宇宙へ旅立った人類はどうしているのかなど、もう少し詳細に描いて欲しいシーンがありました。それから、サムが育てている蜂のシーンはもう少し説明がないとわかりにくいと思います。

登場人物が少ないのは良いのですが、サムとマイカの過去は口頭で語られるだけなので、ビジュアル的に見せて欲しかったと思います。

こんな人にオススメ

人物の心の動きに焦点を当てた映画が好きな人にオススメです。

映画のほとんどは、サムひとりだけのシーンです。サムが一体何をしているのか、何のためにしているのか、彼女はこれからどうするつもりなのか、サムの微妙な表情や言葉から探っていかなければなりません。

マイカが現れてからサムの気持ちに変化が出ますが、分かりやすいラブストーリーではないので、サムの心の微妙な変化を感じ取るよう、映画に集中しなければわかりません。

SF映画が好きな人より、ヒューマンドラマが好きな人にオススメの映画です。

ユピテルとイオをみた私の思い

地球と人類の終末を描く映画を見るたびに、「今、地球を大事にしなければ大変なことになるかもしれない」と思います。

「ユピテルとイオ」も地球の環境汚染について考えさせられる映画でした。宇宙の他の惑星に住むなんて遠い未来かもしれませんが、その時に地球を見捨てるような事態になったら悲しいです。

近未来SF映画は、現代への警鐘を鳴らしてくれます。

今のうちに環境問題を少しでも改善するように努力しなければ!と思いました。