こんな夜更けにバナナかよのあらすじ

主人公は、鹿野さんという中年の男性で、若い頃から筋ジストロフィーという難病にかかっています。

この病気は体を自分で動かせなくなっていく病気で、実際この映画で描かれている年齢の頃の鹿野さんは、首と手しか動かすことができません。

当然日常生活を送るにも自分ひとりではできないことが多いので介助スタッフに頼ることになりますが、申し訳ないとか一切そういうことは思わない方だったようです。

人間誰しも他人に迷惑をかけずには生きられない、できることはできる人がやればいい、他人にはできなくて自分にならできることもある、という鹿野さんのシンプルな生き方に賛同するスタッフの方々の絆が、晩年が近づくにつれてどんどん深まっていく様子を描いた作品です。

総合評価 

評価:★★★★★ (非常に良い)
印象:驚いた・難しい

障害者の生き様という、ややもすると差別や偏見とも取られがちな題材を、モデルになったご本人のお人柄と、演じた大泉洋の演技力で、嫌な感じは一切なく、かと言って「いい話」だけで終わるわけでもない、心に刺さる映画でした。

文句なしに★5にした理由は、観た人の立場や捉え方によって、この映画の着眼点やそれに対する感想が全く異なるだろう、という部分において優秀な映画だと思ったからです。

実際、一緒に観に行った主人とわたしで、映画中の同じエピソードに対する見方や意見がまったく異なる点がいくつもありました。

こんな夜更けにバナナかよのここが良かった

本当の意味でのバリアフリー(心のバリアフリー)が描かれているところが良かった。

主人公の鹿野さんは、はっきりいうとかなりワガママな人間の部類に入ると思います。

その潔いくらいのワガママっぷりを、大泉洋が演じることによって、変に脚色されることなくストレートな鹿野さんの人となりが伝わってきます。

健常者の立場からすると、障害者は自分よりも弱い人間、気遣わなくてはいけない人間だと、自然と身についている感覚がありますが、劇中での鹿野さんは(きっと現実にも)ことを「なんてワガママな人!」とボランティアさんから思われています。

逆に言うと、障害者の立場では他人に手を貸してもらうことを心苦しく思っている方も少なからずいるかもしれませんが、劇中で鹿野さんは一切そんな素振りは見せません。

なぜなら、人は誰しも他人に迷惑をかけずには生きられないから。迷惑をかけ、迷惑をかけられながら、生きていく。

そこには、障害者対健常者という前に、人間対人間のやりとりが当たり前のようにあるのです。

その当たり前なはずの感覚を持つことこそが、真のバリアフリーなのだと考えさせてくれるきっかけになる映画だという点が、この映画のよいところだと思います。

印象に残ったセリフ・シーン

「お前にできなくて俺にできることがある」

「お前にできなくて俺にできることがある」というセリフが一番印象に残っています。(※一語一句正しくは書けていないかもしれません)。

鹿野さんがボランティアさんに向けて言った言葉なのですが、自分はケアを受ける立場ではあるが、一方でそのケアを経験することでボランティア側にも学べることがあるだろうという。

それならばそれは自分にしか提供できないことだ、といったニュアンスのシーンでのことでした。(※このシーンの解説についても、多少私の解釈が入ってしまっているかもしれません)。

体や心のどこかしらに不便を抱えている障害者と、それらの機能を当たり前のように所有している健常者。

障害者は「気の毒」だから健常者が助けて「あげなきゃ」という、一見思いやりに見えるのようで無意識の差別をしてしまっている人はたくさんいると思います(この映画を観る前の自分含め)。

それを主人公の鹿野さんは「お前にできなくて俺にできることがある」と言ってのけ、ややもすると高圧的な印象を与えかねない発言ですが、大泉洋の演技がきっと鹿野さんご本人をうまく投影しているのでしょう。

嫌味な感じはまったくせずに、むしろスッと心に入ってきて考えるきっかけをくれるように感じました。

これまでの自分の考え方を大きく変えてくれたという点で、このセリフとシーンが一番印象に残りました。

ダメだった所や改善点は?

特に見当たらないです。

高畑充希や三浦翔馬など、有名どころが脇に控えているなと思いましたが、ストーリーの邪魔をすることなく、いい意味で障害者介助について無知な感じが出ていてよかったと思います。

こんな人にオススメ

若い世代、とくに高校生・中学生あたりに観てほしいです。道徳の授業で取り上げてもよいくらいだと思います。

今のこどもたちは、ある一定以上の年齢の大人に比べて、マイノリティと呼ばれる考えや人々に対して、特別視しないというか受け皿が大きいなというのは普段から感じますが、障害者に対するそれは他のことよりも敷居が高く間口が狭いように感じるからです。

エピソードが綺麗に描かれているような、分かりやすい教科書的なものよりも、この映画を観て感想を語り合うほうが、よっぽどこどもたちの心の多様性が広がるように思うので、ぜひ若い世代にオススメしたいなと思います。

こんな夜更けにバナナかよをみた私の思い

主人と一緒にこの映画を観ました。普段ですと似たもの夫婦で、同じような映画を好み同じようなシーンでホロっときてしまうのですが、今回はまったく異なりました。

ひとつのシーンから感じた気持ちや、印象に残ったシーンやセリフもまったく違いましたし、映画が伝えたかったであろうメインテーマすら別の意味で受け取っていたのです。

こんな映画は初めてでした。