「容疑者Xの献身」の感想&あらすじ!天才数学者が愛を知る物語

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あらすじ

母子家庭で小さな弁当屋を営む母・花岡靖子と高校生の娘・花岡美里。

2人の親子は小さなアパートで幸せそうに暮らしていましたが、金の無心をする元夫・富樫慎二に付きまとわれていました。

ある日、靖子と美里は富樫と口論になり、激しい抵抗の末に富樫を殺害してしまいます。その様子を不審に思っていたのが、隣の部屋に住む高校教師の石神哲哉でした。

その後、河原で男性の遺体が発見され、警察は捜査に乗り出します。

遺体は指紋が消され、顔も潰されており身元がはっきりとしないものの、遺留品から被害者が特定され、女性刑事の内海薫は「ガリレオ」と呼ばれる天才物理学者・湯川学とともに事件の真相を探っていくのでした。

湯川は自身が天才と称する数学者であり、旧友でもある石神がこの事件にかかわっているのではと疑い始めます。

事件の真相に近づくにつれて石神を容疑者とする仮説は確信に変わっていくのですが、湯川は石神の行動から事件の真実が別のところに隠されているのではないかと感じはじめるようになります。

総合評価 

評価:★★★★★ (非常に良い)
印象:

物語全体を見ると悲しい話しでもあるのですが、登場人物の設定やトリックの内容など、かなり緻密に練られているため、減点するポイントがとても少ない映画です。

無駄なシーンがほとんど見当たらず、ドラマシリーズの続編ながら本作単体でも十分に楽しむことができ、原作の雰囲気が忠実に再現されているので星5つとしました。

サスペンスとしての見ごたえがしっかりとあり、エンターテイメントとしても成立している完成度の高い作品だと思います。

減点ポイントとしてはどちらも軽微ですが、・雰囲気が少し暗い・湯川先生の出演シーンが少ない、が挙げられます。

ただそもそもがミステリー作品であるため星を1つ減らすほどではないと思い、星5つの評価としました。

主人公であるはずの「湯川先生の出演シーンがやや少ない」という点もありますが、これも気になるほどではなかったため星はそのままとしました。

容疑者Xの献身のここが良かった

ミスリード

この作品では高校の教師であり数学者の石神が容疑者の犯行を隠ぺいするための役回りとして描かれていますが、視聴者をだます緻密なミスリードが後半の感動を増幅させていると思いました。

とくに石神を通したミスリードの描き方があまりにもナチュラルで、見返しても感心してしまうほどでした。

初見で見た方はほぼ確実にだまされてしまうと思うのですが、このミスリードがサスペンスの要素としてはもちろん、感動や物語を盛り立てるエンターテイメント的な要素としても機能していることが素晴らしいと思います。

石神の性格

物語序盤から石神は、現在の生活に満足感を得られていない鬱々とした人物として描かれています。

あまり感情を表に出すこともなく、頭の良さだけは分かるものの人間的な部分でどのような考え方を持っているのか分からない人、というイメージを作ることでクライマックスのシーンが引き立っていると思いました。

ただそれだけに映画全体がダークな印象を持ってしまっていることは、エンターテイメント作品として見た場合の弊害と言えるのかもしれません。

自分もあまり感情を表に出すタイプではありませんが、だからこそ石神の心情的な部分には心動かされるところがあり、感情表現が不器用な人なら共感できる部分も多いと思います。

印象に残ったセリフ・シーン

「石神は殺人という方法は絶対に選ばないはずだ」

石神が花岡と共謀して殺人を犯したのではと疑われた際に、湯川は「石神は殺人という方法は絶対に選ばないはずだ」と、石神が直接事件に関与したことを否定したセリフが印象的でした。

この言葉に物語の全てが詰まっていると感じたからです。

石神の人間性

「殺人によって苦痛から逃れるのは合理的ではない。石神はそんな愚かなことはしない」と、刑事である内海に語るのでが、これは石神の旧友である湯川が石神のことを端的に言い表した言葉です。石神とはそんな人間なのです。

実際に石神は湯川と同じように物事を論理的に考える人間で、数学のことにしか興味がなく常に冷静な考え方をする石神は殺人などしません。

自分の考えを曲げてまで守りたかったものが花岡の存在であり、そこには花岡に対する好意がありました。花岡宅で起きた事件の後にその経緯を知り、事件の隠ぺいに努めた石神。

事件の真相を考えれば考えるほど友人である石神を疑わざるを得なくなり葛藤してしまう湯川は、遠くへ行ってしまう友人を思うような少し寂しげな様子で、そんな姿も印象的でした。

石神の愛

しかし石神は数学のことにしか興味がなく、生活や人間関係など、それ以外のことについては不器用な人間でもあります。

そんな石神が自分の考えを曲げてまで守りたかったものが花岡の存在であり、そこには花岡に対する好意がありました。

私はこの映画を見て、「愛」というものの形について考えさせられてしまいました。

いかに明晰な頭脳を持った人でも、大切な人への愛する気持ちを前にしたときには、考えに狂いが生じてしまうものなのだと気づかされました。

愛する人を守るために、石神は矛盾のはらんだ一連の出来事を自然な一本の線にしていきます。

自分の頭脳をフルに使って考えたトリックには警察の疑いを花岡から逸らすだけでなく、花岡の負担を最小限にとどめようとする配慮が感じられて、一連の石神によるアリバイ工作こそが花岡に対する愛情表現だったのではと感じてしまいました。

また花岡宅で起きた事件の後にその経緯を知り、事件の隠ぺいに努めた石神ですが、事件が起こる前に花岡の抱える事情が分かっていれば、石神の頭脳ならもっと良い解決方法を見いだせたのではと思うと切なくなってしまいました。

石神と湯川

「石神は殺人という方法は絶対に選ばない」という湯川の言葉は、劇中ではミスリードを誘う役割を担っているのですが、改めて見直すと湯川と石神の信頼関係が見える言葉でもあります。

十数年ぶりに再会する湯川と石神ですが、数学の話しをしながら楽しそうに酒を酌み交わす石神は劇中で最も人間らしく、いつまでも変わらない友情の素晴らしさを感じさせてくれました。

この映画を見ていて、もしも学生時代に初めてできた友達が殺人事件に関わっていたとしたら、そしてその証拠を自分で見つけてしまったとしたら、自分はその友達やまわりの人間に真実を伝えることができるのかと考えてしまいました。

事件の真相を考えれば考えるほど友人である石神を疑わざるを得なくなり葛藤してしまう湯川は、遠くへ行ってしまう友人を思うような少し寂しげな様子で、そんな姿も印象的でした。

愛と友情

「石神は殺人という方法は絶対に選ばない」というセリフの中には、この映画の中で重要な「花岡と出会ったことで変わった石神」と、「いつまでも変わらない湯川との友情」という2つの要素が詰まっている言葉だと思いました。

こんな人にオススメ

映画「容疑者Xの献身」は事件の描き方から完全犯罪のトリック、真相の解明などの要素が2時間で行われるサスペンス要素が強い作品なので、細かく練られたトリックが好きな方にはおすすめできる作品になっています。

ドラマ「ガリレオ」シリーズを見ていた人にとっては、湯川先生の登場シーンがやや少ないという点はあるものの、登場人物の設定や背景などがあらかじめ分かっている方がより楽しむことできると思うので、まだ見ていない人はぜひ見ておくべき作品です。