あらすじ
主人公・斎藤一子は商店街で弁当屋を経営している実家に引きこもり、ゲーム三昧の日々を送っていました。

あるとき彼女は家庭内で大喧嘩をして家を飛び出してしまいます。

一子は家を借りて100円ショップでアルバイトを始め、引退間近のボクサー・狩野と出会ったことで恋心が芽生え始めるのでした。

そしてリングで戦う狩野の姿を見たことでボクシングに興味を持ち始めます。

狩野との生活はすぐに終わってしまいますが、自分の気持ちをボクシングに向かわせることで一子は見違えるような姿になっていきます。

年齢ぎりぎりながらプロテストに合格し、試合をしてみたいと意気込む一子のもとにデビュー戦の話しが舞い込んでくるのでした。

当日の会場では家族や狩野が見守るなか、格上のボクサー相手に試合に臨むことになります。

総合評価 

評価:★★★★☆ (良い)
印象:

脚本や出演者の演技など相当にクオリティが高く、近年まれに見るような素晴らしい映画であると言えます。

★5を付けても良いぐらいなのですが、良くも悪くも日本映画独特の雰囲気が見る人を選ぶのではとも思いました。

主人公や彼女を取り巻く世界観に入り込めるかどうかで評価が少し変わってくるような気がします。

ただ主演である安藤サクラさんの変貌ぶりはもちろんですが、笑いどころもありテンポの良い作品でもあるので、映画が好きな方なら見ておくべき作品だと思います。

百円の恋のここが良かった

シビアな現実を描いている

序盤の描写から100円ショップの雰囲気など、シビアな現実を描いている部分が多く、それが後半の展開をより感動的なものにしていると思いました。

冒頭に出てくる安藤サクラ演じる主人公の一子が家に引きこもっている描写は見事なほどにダメさが出ていて、体型や姿勢、格好からもその生活態度や不健康な感じがにじみ出ています。

狩野と初めてデートに行く際に服を着るシーンなどを交えて序盤での彼女の体型を見せていますが、それがあるだけに後半の引き締まった一子の体型を見るだけでも感動を覚えることができます。

ストーリーが進むにつれて一子の動きにキレが増し、洗練されていく様子は美しくもあり、動きだけで感動できるという稀有な作品です。

この作品は必ずしもハッピーエンドという形ではありません。

それどころか映画を通して一子という人物を俯瞰で見たときに、良いことの方が少ないのではないかとすら思えてしまいます。

しかし一子が生きる世界をシビアに描いているからこそ、きっかけがひとつあるだけで人間はこうも変われるということをより強く示してくれている映画でもあり、見た後に前向きになれる作品であると思いました。

見ている側が辛くなり過ぎないように、コメディ的なスパイスを効かせてくれているのも良かったです。

印象に残ったセリフ・シーン

「一度でいいから勝ってみたかった」

安藤サクラ演じる一子は、デビュー戦で一方的な展開になり敗北してしまいます。

一子という人物は引きこもっていたときもそうですが、一人暮らしを始めた後もあまり積極的に他人とかかわろうとせず、どちらかと言えば内向的な人物として描かれています。

そのため考えていることが見えにくい部分もあるのですが、ボクシングの練習に打ち込む姿勢や、狩野との接し方などを見ても不器用で一途な性格であることがうかがえます。

それだけにデビュー戦の試合後、会場に来ていた狩野に「一度でいいから勝ってみたかった」と涙を流しながら心の内を吐露するシーンは、これまでの彼女の人生や感じていたことが透けて見えたような気がして感動的なシーンでした。

「そんなに甘くないんだよ」

またボクシングに意気込む一子に対してジムの会長がたびたび口にする「そんなに甘くないんだよ」という言葉は、そのときのやりとりだけではなくこの映画全体に対するテーマのようにも思えました。

映画内で描かれているシーンはわずかですが、動きや体型がまるっきり異なって見えるほどのトレーニングを積んでいるであろう一子でも、試合ではまるっきり歯が立たないという現実の厳しさがあり、それをちゃんと描いているのが印象的でした。

こんな人にオススメ

「百円の恋」は変化や再生の物語でもあると思うので、人生に行き詰まっている人や現状を変えたいと思っている人の背中を押してくれる作品だと思います。

理屈抜きに汗を流している姿や成長した主人公の姿を見せられてしまうと、頑張らないわけにはいかなくなってしまうので、モチベーションを高めたいときにもおすすめの映画です。

また、とくに終盤はスポーツを見ているような感覚になれるので、スポーツで感動したいという方にもおすすめです。