あらすじ

世間知らずの子豚のベイブは、偶然の巡り合わせから農場主のおじさんに引き取られることに。

一見のどかな農場には、色々な「物事のきまり」が横たわっています。動物同士の微妙な力関係、自分の役割に忠実でいること、人間との関係性。

ベイブは牧羊犬のフライに面倒を見てもらいながら、自然と「牧羊豚」を目指すようになっていきます。

でもその道には、種の違いによる偏見や対立、能力の違い、人間が持つ固定観念など様々な障害がありました。

そして、何より決定的な障害は、「仕事を持たない動物は人間に食べられることこそが仕事である」という残酷な事実でした。

世間知らずだったベイブは少しずつ世の中の現実に触れながら、他の動物や人間たちとの付き合い方を模索し、自分の生き方を見つけようと歩みはじめるのだが・・・

総合評価 

評価:★★★★★ (非常に良い)
印象:悲しい・楽しい・知的

この映画は、他者を理解し、自分の生き方を選ぼうと努力するお話。

娯楽作品として面白かっただけでなく問題提起的な意味も含んでおり色々な見方ができる。それなのに全体としては重すぎず、楽しく観られる。

映像の作り方も違和感がなく、動物がしゃべるという特殊効果も自然に見ることができた。以上の理由からエンターテイメント性に死角のなさを感じ、星5評価かなと思った。

小さな子どもが観ても主人公の活躍を純粋に楽しむことができ、大人が観ればもっと大きな視点で色々と考えることのできる作品だと思う。

ベイブのここが良かった

動物と人間の距離の描き方がとても良かった

動物たち目線のときには動物たちは人間の言葉をしゃべり、動物同士が人間のようにやりとりをします。ですが人間目線の場面では、動物はただの動物であり、人間とは違う生き物として描かれています。

農場主の奥さんがベイブに残酷な言葉をかけたりどれくらい太ったかを確かめようとする場面で、ベイブは構ってもらえたことに無邪気に喜びます。

殺されそうになる場面では、エサがもらえるんだろうとわくわくして大人しく待っています。人間と動物は、残念ながら人間同士のようにはわかり合えないのです。

一方、農場主のおじさんはメインのキャラクターでありながら、たいへん無口です。無口な分を行動で示し、日々を淡々と生きています。

行動の端々から家畜をとても大切にしていることが伝わってきますが、殺さなくてはいけない時には殺す、矛盾しているとも言えるキャラクターです。

しかし物語を見ていくと、おじさんが動物を大切にするのは生活に必要だからで、単に可愛がっているのではない事が分かります。

農場主としてのビジネスライクな部分と、個人としての動物を慈しむ気持ちは、矛盾しながら両立しているのです。

おじさんは動物を擬人化して捉えず、人間のようにはわかり合えないものだと理解しています。

その上で、可能な範囲で精一杯理解し、尊重しようとするのです。生きるのに必要なら殺すがそれまでは大切に育てるというおじさんの姿勢は、冷酷なようで誠実に思えます。

人間が動物を利用しているという関係性を、綺麗事にせず描いていると感じます。

印象に残ったセリフ・シーン

「決まりだからよ」

原語では”that’s just the way things are”で、訳や言い方を変えて何度か出てきます。

ニュアンス的には、「そういうものだから」ということだと思います。初めに出てくるシーンでは、ベイブが牧羊犬のフライについて家の中に入ろうとした時に言われます。

犬と猫しか入れないと言うフライにどうして?と問うと、こう返されたのです。

このセリフは、劇中でベイブが直面する困難を象徴しているように感じ、印象に残りました。豚はこうしなさい、豚はこうしたら変だ、なぜならそういうものだから…比較的さらっと済まされるシーンですが、印象的です。

「それでいい」

これも訳を変えて何度か出てくる”that’ll do”で「それでいい」、というニュアンスだと思います。

the way things areという言い回しは農場の複数の動物たちが使いますが、that’ll doを言うのは農場主のおじさんです。

これは、「そういうものだから」と対になるセリフに思えました。ベイブとの出会いの場面に始まり、おじさんは何度かこの言葉を使います。

この言葉は、色々なトラブルが起きても淡々とそれを受け入れるおじさんの生き方をよく表していると思えて印象的でした。

おじさんの言葉はどちらともとれる

農場の規律を守るという名目で「そういうものだから」を強調し、それがルールだからと豚は豚らしく、アヒルはアヒルらしく…という規範を課す動物たちに対し、

当の農場主が周りの状況や規範から外れた動物たちの振る舞いを「それでいい」と諦めて受け入れる様子は、正反対の対比に見え、面白い描写でした。

おじさんの「それでいい」というセリフは、動物たちの「らしくない(規範から外れた)行動を許容する姿勢そのものであり、

ポジティブに捉えればこの言葉はおじさんの寛容さ・生き方を表した、ベイブの「らしさ」から外れた振る舞いを受け入れるセリフです。

しかしネガティブに捉えれば、農場の規律を守らなくては生きていけない動物たちの実情に対し無理解な人間のセリフにも思え、いつ殺されるか分からない家畜たちと人間の決定的溝を表しているようにも思えました。

こんな人にオススメ

まずシンプルに、動物好きの人にオススメです。動物たちが生き生きと暮らし、しゃべり合う様子は夢があってわくわくします。

また、人間が動物を殺して生きていることについて、考えたり悩んだことのある人にもオススメです。

映画で描かれる「人間の役に立たなければ生きていけない」という農場の暮らしは、人間と動物の関係性の現実であり、「生き物を犠牲にすること」について再考する機会になると思います。

あえて同情を誘うような演出もなくある種淡々としているからこそ、改めて感じるものがあるような気がします。

私の思い

映画そのものの話ではないのですが、翻訳の難しいセリフが多いと感じました。

ベイブが顔の見えない相手に話しかけるシーンで、「僕は豚です。あなたは?」「私は雌羊よ」「あなたは何ですって?」というやりとりがありますが、

英語版で観るとベイブがewe(雌羊)をyouだと聞き違えているせいで会話が噛み合っていないのだとわかりました。

上記の印象に残ったセリフに挙げたthat’ll doも、本当は一貫して同じ訳にできたら一番いいと思うのですが、文脈上そういうわけにもいかず難しいと思いました。

字幕の訳は字数制限もある分ニュアンス通りには訳しづらいのだろうなと感じ、もっと英語がわかるようになりたいという気持ちになりました。