あらすじ
東京の下町の古い家に、一見普通の大家族が住んでいる。おばあちゃんはみんな年金にたかると文句を言い、父、母、母の妹も働きに出ているが、父は息子の祥太を相棒にして万引きで日銭を稼いでいた。

さらに大きい秘密は、彼らが家族でなく、他人同士のよせ集まりであることだった。

ある日、万引きの帰りにベランダに締め出された少女を見つけた父は、その子を家に連れて帰る。母は少女が虐待されていることを知り、ゆりと名付けて家族として面倒をみることにする。

貧しいながらも仲の良い彼らは、子供たちの面倒をみながら幸せに暮らしていけるかに思えたが、ゆりの本当の両親が娘の失踪を届けていなかったことがニュースとなり、生活がほころび始める。

同じころ、無邪気に父を信じて万引きにいそしんでいた祥太は、自分のしていることに疑問を持ち始める。

そして、自分と一緒にいたゆりが万引きを見つかりそうになった時、わざと自分が万引きをして逃げだし、大人たちに追われることになる。

彼らの危うい暮らしは、子供たちを守っていけるのか。

総合評価 

評価:★★★★☆
印象:泣ける・悲しい・

是枝監督らしい、じんわりと情感が滲むような画面の美しさは独特で、それだけで映画館で見るのが心地よいです。しかしストーリーは厳しく、寄せ集めでも幸福になろうとして生きていた疑似家族の暮らしに訪れるほころびを静かに追っていきます。

家族を失っても人のぬくもりを求める大人たち、子供たちの心の動きが伝わってくる、現代を鋭く描いた家族映画だと思いました。

物語のカギとなる少年の行動があまりに聡明すぎる気がして、★5でなく4にしました。子供は、もっと間違いだらけでいいよ、と言ってあげたい。

万引き家族のここが良かった

疑似家族の、一筋縄ではいかないふてぶてしさを漂わせつつ、互いに寄り添っているぬくもりが感じられるのが心地いいです。

リリー・フランキーの、頼りなくていい加減だけど愛情をしっかり注いでいる感じ、安藤サクラのまっとうな正義感が、この家族の温かみを作り出していると思いました。

けれど、彼らが成功していくようなファンタジーではなく、彼らの暮らしの危うさがしっかり描かれているのもいい。

温かみを求めるだけでは生きていけない、それは彼らがいい加減だったせいもあるけど、今の社会はまだ、普通の家族以外の形をうけいれてくれるような制度もなければ、精神的な背景もできあがっていなのが理由だと思います。

それを象徴するかのように、終盤、彼らを取り調べる警官として登場する池脇千鶴と安藤サクラの、どうしてもかみ合うことのないやりとりは、この「家族」の温もりを認められない社会の壁の高さを実感させて、とても見応えがありました。

しかし、そんな大人たちのいびつでもまっとうな愛情を、子供たちがしっかりと受け止めて、生きていく姿には泣かされてしまいます。

是枝作品の子供たちは、いつも本当にそこに生きているような生々しい存在感があって、彼らの今後の人生がよい方に変わっていくことを祈らずにはいられませんでした。

印象に残ったセリフ・シーン

疑似家族のシーンはどれも、下町っぽい明るさ、温かさと、はみ出し者たちのうさん臭さが同居していて面白いです。

樹木希林

中でも、おばあさんを演じる樹木希林さんは、悟りきっているように見えて、ふとした瞬間に「生」への強烈な執着を感じさせる女優さんで、今回も元夫の家族に金をせびりに行く場面に一筋縄ではいかない人生の深みが漂っていて素晴らしかった。

リリー・フランキー

リリー・フランキーの、父親になりたくてなりきれない、万引きに疑問を持ち始めた息子に追い抜かされていってしまう哀しさも絶品。

安藤サクラ

安藤サクラの、自然に子供たちのお母さんになりながらも、自分のできることをわきまえている聡明さも心に残ります。

彼女の気持ちを決して理解することはないであろう警官の前で滲み出た絶望の涙は、疑似でも家族だった彼らの暮らしの温かさと脆さを感じさせて、この映画の中でも最も刺さってくる名場面でした。

子供たち

子供たちに、家族の外の立場から接してくる大人もいて、万引きした少年をやんわりとでもしっかり諫める柄本明の店主さんも印象的です。

学校にも行かない暮らしをしていた少年に、暮らしへの疑問を感じさせ、成長させるきっかけになります。社会の厚みもまた子供の成長には必要で、それをしっかり受け止める少年がまぶしく思えました。

こんな人にオススメ

人によって違う見方になりそうな重層的な映画ですが、家族を描いた、たとえば山田洋二監督の家族映画が好きな人には、新たな視点でホームドラマを見られる作品だと思います。

また、子供が成長して社会への入り口に立つ時期を描いた映画として、これから社会に出て家族との関係を模索していく若い人たちにもお勧めしたいです。

自分が育ってきた境遇が社会の中でどういうものだったのか、これから生きて働いたり、家族を作っていくという事がどういうことなのか、考えるきっかけになると思います。