あらすじ
江戸時代、藩の中でも屈指の剣の腕を持ちながら、上役の不正を訴えたことで藩を追われた瓜生は、病弱の妻と不遇な暮らしを送っていた。

瓜生がかつて訴えたのは、藩の同士である采女の父。しかし藩での取り調べの後で何者かに殺されていた。

采女は瓜生の妻をめぐる恋敵でもあった男だが、今は藩を背負いつつある若い役人となっている。そんな采女のことを、瓜生の妻は気にかけ、彼の力になってほしいと言い残して息を引き取る。

瓜生は妻の遺志に答えることだけを望み、藩に帰ってくる。藩では、妻の妹の里美、弟の藤吾が、それぞれ複雑な思いを抱えつつ、瓜生を迎え入れる。

しかし、かつて瓜生を追放に追い込んだ重臣石田が、瓜生のみならず、役人の立場から藩の不正を正そうと苦心する采女をも抹殺しようと手を伸ばしていた。

瓜生は采女と対峙し、長年の思いをぶつけ、妻の遺志に答えるために戦うことを決意する。

総合評価 

評価:★★★★☆
印象:

ベテラン映画人の監督、実績ある俳優陣の競演、という鑑賞前のイメージに充分答えてくれる、重厚な時代劇の空気を堪能できました。

殺陣や景色の美しさも一級。それでいて、堅苦しい物語ではなく、武士として挫折を味わった主人公の友人たちとの葛藤や妻をめぐるメロドラマにはいい意味での下世話さがあって、身近に共感しながら見られます。

勧善懲悪がはっきりしすぎていて、いかにもな悪代官?をやっつける話になっているのがちょっと安っぽくも見えるので、★一つ落として4にしました。

・・・
勧善懲悪(かんぜんちょうあく)は、「善を勧め、悪を懲しめる」ことを主題とする物語の類型の一つ。

散り椿のここが良かった

美しい映像

監督としては三作目でも、時代劇を含む数多くの日本映画の映像を作ってきたベテランカメラマンが監督、という事前の期待に応えて、重厚な時代劇ならではの映像が素晴らしいです。

雪景色から椿が咲くまでの季節の風景、日本家屋の中で人々が語り合う端正な美しさ。

殺陣

また、静と動の緊張感あふれる殺陣もお見事だと思います。

主演の岡田准一は、なんとなく直線的で面白みがない印象があって、こういう重厚な雰囲気だと特に親しめなさそうだと思っていたのですが、今回は、一度藩の正統から外れてしまったやさぐれた雰囲気、居候した妻の実家でのんびり酒を飲んでいるような感じがいい。

一方で、友人にぶつける苦悩や、重臣に対峙する表情には、友人や社会のことを思う真摯な人柄が感じられて、妻の弟の池松壮亮が自然に彼になついていく感じも納得できます。殺陣のキレのすばらしさを含め、初めて魅力的な主演俳優だと思いました。

分かりやすいストーリー

ストーリーはいい意味でわかりやすく、主人公と妻、かつて恋敵だった友人をめぐるメロドラマと、藩の不正を正そうとする勧善懲悪のストーリーが並行して描かれます。どちらの物語も感情移入しやすく、深く共感しながら見ていました。

印象に残ったセリフ・シーン

妻に対する思い

予告編でも流れていた、「その約束を果たしたら、ほめてくれるか?」と瓜生が妻に尋ねるシーンが印象的です。

厳しそうに見える主人公が弱さ、可愛らしさを抱えていることを感じさせて、微笑ましくもあるのですが、同時にその思いだけを胸に敵だらけの藩に帰ることを決意する瓜生の、妻を失う寂しさが強く伝わってくる名シーンでした。

弟との関係

藩に戻ってからは、妻の弟である藤吾を演じる池松壮亮との関係が魅力的。

始めは、姉を不幸にした男、という感じで、あまり好意的ではない雰囲気なのですが、酒を酌み交わし、剣の稽古を交わすうちに、次第に人柄に惹かれ、師弟のような関係になっていくのがごく自然に感じられてよかったです。

池松壮亮は、最初の方のシーンではセリフ回しがあまり時代劇っぽくないかなと思ったんですが、その飾り気がなくて無口な感じがこの素直な弟にピッタリあっていて、好演だったと思います。

采女(西島秀俊)とのシーン

そして、何より鍵になる采女を演じる西島秀俊とのシーンが続く後半が心に残ります。

妻が見たいと望んでいた散り椿の下で、お互いにどうしても許せないと思っていた葛藤をぶつけ合い、瓜生が妻の真意に気づかされる展開は、映像と殺陣の美しさも相まって、非常に見応えがありました。

藩の中の人間として、瓜生以上に苦悩して生きてきたであろう采女が、妻の真意をくみ取って瓜生に伝えてやる男気に感動しました。

こんな人にオススメ

昔ながらの時代劇ファンには、間違いなく満足できると思います。

映像も殺陣もキャラクターも見事。岡田准一さんは、正直まだ重厚な時代劇の主演には合わないかもと思っていたのですが、それもまったく杞憂でした。

時代劇ファンでなくても、いい意味で下世話でわかりやすいストーリーで、入り込んで見られると思います。

特に、圧倒的な権力を持つ重臣に反旗を翻す展開は、最近はやりの「半沢直樹」系のサラリーマン物語に通じる痛快さがあり、社会でふつうに働いている人には共感できるところがあるのではと思いました・