あらすじ
経営状態が傾きすぎた劇場をなんとか救おうと奮闘する劇場主と、彼に出会って価値観や歌うことへの喜びを見出して変化が得られた登場人物たちの変化のプロセスを描いた物語です。

経営が傾いているので主人公はいつも銀行からの督促の電話をかわし続けながら次の公演をどうしようかと頭をひねり、新しいアーティストの発掘を考えつきます。

事務のオバチャンのミスで賞金がとんでもない額になり、それに飛びついて沢山の人(動物)がオーディションにやってきますが、主人公は彼らを邪険に扱うことなく真剣に選考します。

その中から7組が選ばれるのですが、彼らをステージに立てるレベルにするには沢山の苦労が待っていました。それをなんとかやり遂げようとする奔走する主人公ですが、トラブル続きでうまくいきません。

ついには劇場そのものが壊れてしまう。そこから、自分にできることを探して始め・・・

総合評価 

評価:★★★★★
印象:楽しい・興奮・幸せ

アニメーションですが、非常に緻密にできている映画ですし、登場人物が全部動物というところが興味深いです。

物語も楽天的なショービズ界で生きていくには難がありつつもショービズに関する情熱が誰よりもあり、愛情も深く、新しいことをやってみようと恐れない主人公が非常に魅力的です。

一方で、臆病さも持ち合わせていて、その臆病さや現実との折り合いをつけるのが下手な主人公も魅力。

劇場を窮地から救う最後の一手として行うオーディションと、それに集うキャラクターたちの抱える課題や持ち味の良さなどがどんどん開花していくさまは何度見ても勇気づけられます。

主人公と友人、オーディションを勝ち抜いた人々の想いの変化や頑張りには感動させられました。

SING/シングのここが良かった

この映画には悲壮感がない

また、主人公のショーをよくしようとするアイディアが突飛だけれどとっても素敵です。イカを使ったショーにはアニメだと分かっていても感激しました。

物語の途中で挫折を味わう主人公が、自分にできることをするしかないとお金集めのために自分の父親がやっていた仕事をするシーンがありますが、そこも感動します。友人が手伝ってくれるのですが、その様子もコミカルで決して悲壮感はありません。

この映画の中に悲壮感はないのです。どんなに挫折しようとも、うまくいかないことが待ち受けていようとも、どんなピンチに陥っても悲壮感がないということ、それがなかなか観られない映画だと思いました。

登場人物それぞれの物語がある

また、それぞれの登場人物にも当然物語があって、それらがとても丁寧に描かれているのも魅力のひとつ。

主婦がものすごいDIY能力を見せたり、失恋したティーンエイジャーがものすごくよい曲を作ったり、父親が刑務所に入って面会を拒否するゴリラがいるのですが、その親子の絆の再構築の物語にもじーんときました。

歌声がすばらしい

まず、オーディションに残った動物たちの歌がすばらしかったです。それぞれ吹き替えしているアーティストがいるのですが、日本版も英語版も素晴らしくて、聴きごたえも見ごたえも十分でした。

印象に残ったセリフ・シーン

像の女の子と主人公のやりとり

オーディションで歌うことすらできなかったゾウの女の子が、ある日、勇気を出して「ショーに参加したい」と戻ってきたのに、なんと裏方に廻されてしまいます。

だけれど、それでも頑張って仕事をこなそうとする姿には彼女の人柄の良さを感じたし、人前で歌うことへの抵抗感も見事に描かれていて、その彼女を励ます主人公のセリフが印象的でした。

「歌いだしてしまえばいいんだ」と、怖がっているばかりではなくまずやりたいことをやってみようという意味なのですが、それが自分にも当てはまることだなぁと考えさせられました。

ヤマアラシのシンガーが失恋後ステージで歌うシーン

後は、ヤマアラシのティーンエイジャーが興奮するとハリが飛んできて観客にも刺さるのですが、それをしてもなお素晴らしい演奏に対しての観客の寛容さがとても印象的でしたし、「みんな、大丈夫?」と聞く彼女の優しさが光っていたシーンでもありました。

彼女が完全に失恋から立ち直って自分の足で立ったシーンでもあって、新しい彼女のステップへの希望が持てるシーンでもありました。

失恋の原因になった、元彼の浮気相手のサングラスをかけてステージに上がっているところは、彼女の強さと次に進むという決意が感じられ最高です。

主婦のブタさんがヤマアラシの彼女を慰めるところ

あとは、主婦のブタさんがそんなヤマアラシの彼女を慰めようと、リハーサル中に「鞄の中にガムやアメが入ってるから好きなのを食べてね」と言うシーンがあって、私はそこが大好きでした。

沢山の子どもを抱えるママの必需品が、他の人を慰めようとしている、というところにクスッともしたし、じーんともしました。

こんな人にオススメ

歌が好きな人には必ず観てほしいと思います。なぜなら全てのアーティストの歌声やアニメとはいえ彼らのパフォーマンスは素晴らしくて、とっても楽しめるからです。

あまり人と歌を楽しむ習慣がないと言う人にも、こんな風にみんなと楽しむことができるということを体感してもらえると思うので、ぜひ観てほしいと思います。

ついつい体を揺らしたり、サビの部分のコーラスをやってしまったりすること請け合いです。カラオケなどが苦手な人にまずは一番に観てほしい作品です。